東京都23区アブラコウモリ生息調査報告書(2013年版)

2013ロゴマーク

執筆:宮本 拓海 (東京コウモリ探検隊!)
2013年12月


■1.前文

宮本はこれまで「東京タヌキ探検隊!」としてタヌキ、ハクビシン、アライグマなどの目撃情報を収集してきた。2013年からは東京都23区のアブラコウモリの目撃情報の収集を開始した。タヌキとアブラコウモリでは探索の方法はまったく異なるため、東京タヌキ探検隊!で構築してきた方法・システムはそのままでは使えない(流用できる部分は多いが)。1年目は方法・システムを構築しながらの調査となり、参加者数も少なかったため十分な結果には到達できていない。それでも調査の過程・結果からいろいろなことがわかってきた。これは来年以降の調査にも役立つだろう。

文中に「DBN123」のように記されている数字は、データベースで目撃情報に割り振られた通し番号である。この報告書での通し番号は2013年の記録に限ったものである。

※気温・風速は気象庁のデータを使用している。 地点は「東京都 東京」で代表し、10分ごとのデータを使用している。
気象庁「過去の気象データ検索」 http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php

※本稿に掲載した地図は国土地理院発行の以下の数値地図を複製・使用した。
「数値地図5mメッシュ(標高) 東京都区部」
「数値地図50mメッシュ(標高) 日本II」

●2013年のアブラコウモリ調査参加者(登録順、敬称略)

宮本拓海
匿名希望
徳山
古田
篠崎
みけちゃん
小松周

■2.調査結果

●調査方法

調査方法の詳細については計画書(「東京コウモリ調査(2013年)」)をご覧いただきたい。

参加者はネットで募集した。
参加者は個別に観察して、宮本に結果を報告する。観察場所は参加者に任せているが、河川など観察しやすい場所を推奨している。また、できれば複数の地域メッシュでの観察をお願いしている。観察時間は日没時刻前後を推奨しているが、それ以外でもデータベースに記録している。
観察期間は4月〜11月である(4月の観察は0件)。

●調査件数

今年の参加者数は7名。
観察記録の合計は233件。ただし、内1件(DBN213)はプライベートな空間であるため(家屋ベランダに着陸)、以下の集計には算入されていない。
観察記録が最多の参加者は宮本自身である(203件)。宮本を除く参加者の平均記録件数は4.8件である。

同じ場所での複数の目撃情報は、それぞれ別の目撃としてデータベースに記録した。同じ場所でも日時が異なれば別の意味があるからである。ただし、宮本が観察した分のうち8月までは同じ場所での複数回の目撃は、データベースでは同じレコードとして扱っている。
今年は参加者数が非常に少ないため、別の参加者が同じ場所で観察をすることは想定していなかった。ところが、ある場所では2人の参加者が1日ずれて観察をした。その後、宮本もその現場で観察したので、同じ場所で3回の観察が記録されている。
同じ場所での観察は無駄なことではなく、ダブルチェックという意味でも歓迎したい。

●目撃地点の分布

目撃地点をメッシュ地図で表す。メッシュは地域メッシュ(第3次メッシュ)であり、約1km四方に相当する。

「生息あり」は、目撃地点数や目撃頭数とは関係なく、目撃があったメッシュである。
「生息なし」は、その場所に探索に行ったが、目撃ができなかったメッシュである。もちろん、メッシュ内をすみずみまで探したわけではないので、実際には生息している可能性もある。今回は「宮本が探索した場所」のみ着色している。
「未観察」は、探索を行っていないメッシュである。

「生息あり」は60メッシュ(8.6%)、「生息なし」は19メッシュ(2.7%)である(括弧内は全699メッシュに対する割合)。

探索できなかったメッシュが多く残されているため、調査としてはまだ不十分である。より多くのメッシュを探索することが来年以降の課題である。

河川は区の境界線になっている箇所が多く、区ごとの集計が難しい。よって、区ごとの集計は行わない。

補足:メッシュ地図について

上記のメッシュ地図のメッシュ数は699である。ただし、東京都23区以外の自治体や海が含まれる「不完全なメッシュ」が227ある。これを0.5メッシュに換算すると、585.5(=699-227/2)メッシュが実質的な面積になる。
なお、「河川敷がわずかに含まれるだけのメッシュ」は除外している。また、「どかまでが海か、河川か」の判断は宮本が行っている。このように微妙な判断が含まれるため、正確なメッシュ数を算出することはできない。

●観察時刻

今回の調査では正確な観察時刻の報告は義務づけていないので集計は行わない(実際にはほとんど目撃情報で時刻は記録されている)。また、川沿いを移動しながらの観察も多かったため、観察時刻に意味があるのかという問題もある。
これらは来年以降に改善案を考えたい。

今回の調査での観察時刻は、ほぼすべてが日没時刻の約30分前〜約2時間後の範囲に収まる(最も観察しやすい時間帯を選んで観察しているためである)。
例外は、午前10時台(昼間の目撃、8月、DBN072)、午後9時台頃(8月、DBN212)の2件があった。

●目撃個体数

多数のアブラコウモリが飛んでいる場合、全体を視野の中にとらえることは難しく、素早く動き回っているため、個体数を正確に数えることは不可能である。確実に数えることができるのは10頭程度である。非常に数が多い場合、橋の上流方向、下流方向でそれぞれ数え、その合計を記録することもできる。この場合は約20頭を数えることができる。そのため、データベースでは20頭が最大値になっている。実際には、宮本が観察した例では30〜50頭が飛んでいると思われることがあった。
データベースでは「X頭以上」という記録を許容し、集計では確実に数えられた「X頭」を採用している。
今回の調査での目撃個体数の平均は3.0頭。最大は20頭である(DBN29、42、105)。

●季節変動

7月以前は目撃できる個体数は少なかった(多数飛翔する例もあった)。 8月上旬に目撃個体数が増加した。当年生まれの子供たちが飛翔に加わるようになったためと推測される。実際、8月には子供とみられる小さい個体が混じっているのが確認できた。
10月に入ると目撃個体数は減少し、10月末になるとほとんど目撃できなくなった。
月別の平均目撃数を表にすると次のようになる。8月以降に観察数が多いのは、アブラコウモリが増加する時期を狙って宮本が観察回数を増やしたためである。

5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
観察場所数 2 16 7 98 87 19 3
平均目撃数 5.5 4.6 1.7 3.4 2.7 1.3 1.7

サンプル数が少ないと数値が大きくなりやすいため、この表は参考程度にしかならないことに注意してほしい。また、この表では「目撃できなかった観察場所」も含まれていない。

●最も早い観察日

最も早い観察日は5月6日(DBN001)である。
実際にはもっと早く、3月頃から活動を開始していると考えられる。

●最も遅い観察日

最も遅い観察日は11月10日(DBN233)である。

●気温との関係

気温20℃以下での観察でアブラコウモリが目撃できた例とできなかった例は次の通りである。気温は観察時刻に最も近い時刻のもの、観察できなかった例では日没時刻に最も近い時刻のものである。

観察できた例

11月3日、19.0℃(DBN231、232)
11月10日、17.3℃(DBN233)
10月29日、15.2℃(DBN230)

観察できなかった例

11月9日、14.8℃
10月26日、14.4℃
5月7日、14.4℃

15℃前後がアブラコウモリの活動の下限値らしいことがわかる。今回の事例では15℃が境界のように見えるが、サンプル数が少なく、観察地点ごとの気温の誤差があるため実際には幅がある数値になるはずである。
なお、すべての個体が15℃ぎりぎりまで活動するわけではなく、ほとんどはもっと高い気温でも活動しない。15℃付近で活動する個体は非常に少ない。

●観察場所

観察場所を分類すると、河川200件、公園・グラウンド14件、道路上5件、池3件、駐車場2件、神社2件、その他6件である。その他とは、空き地(DBN100、106、193)、皇居内濠(竹橋、DBN222)、釣り堀(DBN229)、民家上空(DBN233)である。河川には玉川上水も含む。河川に近接する場所も河川に含めている。
河川では非常に多く観察できた一方、それ以外の場所ではアブラコウモリが出現しそうな開けた空間がある場所でも目撃できないことが多くあった。アブラコウモリは河川(あるいは「水がある場所」)を主な活動場所にしていることがわかる。
データベースでは「河川」としたが、川沿いの民家上空を飛んでいる例もあった(DBN176)。
樹木上空を高く飛ぶ事例もあった。公園の樹木の上(DBN1、3、「公園」に分類)、神社の樹木の上(DBN22、「神社」に分類)で目撃された。民家上空の例もそうだが、これらは「オープンスペース」とは言いにくい場所である。
寺・墓地でも観察をしたが目撃はできなかった。

●神田川水系の探索

今年は宮本が神田川水系のほぼ全区間を踏破した。神田川水系には、神田川、善福寺川、妙正寺川、江古田川、日本橋川、亀島川、外堀(外濠、飯田橋〜市谷本村町)を含む。上の生息分布図で青いメッシュが連なっている場所がだいたい神田川水系にあたる。
分布図からもわかるように、多くの場所でアブラコウモリは観察できた。一般的に緑地が多い場所ほど目撃しやすい傾向があった。

しかし、生息が確認できなかった区間もある。
・善福寺川上流部=原寺分橋(杉並区善福寺1)より上流側。善福寺公園でも確認できなかった。
・妙正寺川上流部=八幡橋(中野区白鷺2)より上流側。妙正寺公園、妙正寺でも確認できなかった。
・江古田川上流部=本多橋(中野区江古田3)より上流側。江古田の森公園でも確認できなかった。

以上の河川流域は普段の水量が非常に少なく、そこで繁殖する昆虫が非常に少ないためアブラコウモリが集まらないのかもしれない。しかし、善福寺公園のように大きな池、多くの樹木があるにもかかわらずアブラコウモリが確認できないというのは不思議なことである。

・日本橋川、亀島川のほぼ全区間=目撃できたのは日本橋川の最上流部の新三崎橋、あいあい橋(いずれも千代田区三崎町3)のみ。

同じく都心を流れる神田川最下流部(水道橋〜隅田川合流地点)ではアブラコウモリが確認できたのとは対照的である(アブラコウモリは日本橋よりも秋葉原の方が好みということになる)。

神田川では一部で目撃が非常に少ない区間があった。豊橋(新宿区西早稲田1)〜水道橋の間では3ヶ所でしか目撃できなかった。また、外濠では1ヶ所でしか目撃できなかった。ただし、これらは10月に観察したため、出現のピークを過ぎていた可能性がある。

●目撃できなかった場所

今回の調査では「目撃できなかった場所」の定義をしておらず、データベースには記録していないが、宮本が観察を行った場所については「目撃できなかった場所」のメモを残している。それが上記分布図の「生息なし」にあたる。
神田川水系以外で「目撃できなかった場所」は、JR品川駅・港南口広場(港区港南2)、越中島川とその周辺(古石場川親水公園など=江東区古石場、牡丹、塩浜)である。
観察地点がまだ少なすぎるが、海岸近くではアブラコウモリは少ないのかもしれない。

●風速との関係

アブラコウモリは風がある時でも飛んでいる。もちろん台風の中を飛んでいることはないだろうが、人間が「強い風」と感じる場合でも飛んでいることは確認できた。

気象庁の定義では「やや強い風」でも10m/s以上となっており、今回の事例はそれにも達していないが、日常生活では「強い」と感じられる風であった。ちなみに気象庁の「やや強い風」とは「傘がさせない」状態とされているので、感覚的にはかなりの強風である。

2013年10月12日の夕方は最大で風速5.8m/s程度を観測している(ちなみにこの日は「最も遅い真夏日」の記録を2日連続で更新した日。夕方から強い北風が吹き始め、気温も急激に下がった)。常時強い風だったわけではないし、地形によっては風が弱くなる場所もあっただろうが、アブラコウモリの飛翔は複数箇所で確認できた(この時の観察場所は日本橋川〜神田川にかけてである。DBN222〜226)。
2013年8月16日に善福寺川(環七通り付近)を観察した時は風速4.0〜4.5m/s程度の風だった。ちょうど風向と河川の方向が一致していたため、アブラコウモリが向かい風を受けながら飛ぶ場面もあった。風が強すぎたため、アブラコウモリが羽ばたいているにもかかわらずまったく前進できない、という様子も観察できた(DBN81、82)。
風速4.5m/sだったと仮定すると、これは16.2km/hに換算できる。厳密な測定ではないがこれがアブラコウモリの飛行速度とすると自転車(レース用ではない家庭用の自転車)と同程度ということになる(この時、アブラコウモリは強く羽ばたいていただろうから、通常よりも速く飛んでいたと思われる)。

●その他

以下は宮本が観察時に気づいたことである。

・アブラコウモリは川で低く飛ぶ

アブラコウモリは河川でよく見られたが、多くの場合は道路面よりも低く飛んでいた。神田川など東京都23区の中小河川は深く掘り込んであるため、道路面から水面まで数mの高さがある。そこをアブラコウモリが飛ぶということは、人間の目線よりも下を飛ぶということであり気づかない人がほとんどではないかと考えられる。アブラコウモリを見た事がないという人が多いのはこのためかもしれない。
今回の探索場所の中では秋葉原の万世橋(中央通り)、和泉橋(昭和通り)は人通りが多い場所だが、アブラコウモリは低く飛んでいるので気づく通行人はいないようだった。
もちろん河川でアブラコウモリが高く飛ぶこともある。個体数が多い場合は高く飛ぶことが多いようだ。
アブラコウモリが飛ぶ場所は、食べ物になる昆虫がいる場所であろうと推測できる。

・アブラコウモリはトンボを食べない

2013年9月18日、神田川(山手通り付近)でアキアカネが多数飛んでいるのを目撃した。アブラコウモリと同じく、小さな昆虫を捕らえるために集まってきたらしい。ちょうど日没時刻で、アブラコウモリも飛び始めていた。アブラコウモリはトンボを食べるのだろうか?と思いしばらく観察したが、アブラコウモリはまったく無関心だった。アブラコウモリはトンボサイズの昆虫は食べないようだ(DBN175、176、177)。

・アブラコウモリの中にツバメが1羽

アブラコウモリに混じってツバメが飛んでいる例もあった。2013年8月5日、善福寺川(杉並区成田西1)では20頭以上のアブラコウモリが乱舞していたが、よく見るとその中にツバメが1羽混じって飛んでいた。ツバメはシルエットが異なり、飛び方も直線的なので区別は可能である。ちょうど日没時刻に近い時刻で、ツバメはねぐらに帰る直前だったようだ(DBN29)。
アブラコウモリと鳥が同時に飛翔している例はこの時だけだった。

・アブラコウモリの出勤と給水

アブラコウモリは家屋をねぐらにするとされている。残念ながらねぐらの場所を特定することは今回はできなかった(そもそもそれは調査の目的ではない)。
日没時刻にアブラコウモリが河川に飛来する場面をたまたま1度だけ見ることができた。そのアブラコウモリは屋敷林のある方向から飛来し、妙正寺川の橋の下をくぐっていった。その時、アブラコウモリは水面をかすめて飛んでいった(水の波紋で確認できた)。アブラコウモリは水を飲んだのではないかと思われる(DBN123、2013年9月2日、環七通り)。

■3.その他

以上が調査結果の報告です。
ここからはその他のことについて書き記します(文体も変えています)。

●まず最初に反省会

今年は1年目ということもあり、参加者募集を積極的には行いませんでした。まずは自分自身で歩いて、アブラコウモリの生息状況を確認し、観察の方法を洗練させることも必要だと考えたからです。あまり宣伝しなかった割には6名も参加していただき感謝しています。
ただ、計画のページに宮本の連絡先(メールアドレス)を掲載することを忘れていたのを秋になって気づいてしまいました。東京タヌキ探検隊!のホームページを探せばメールアドレスは見つかるのですが、計画のページにちゃんと載せていれば参加者はもっと増えていたでしょう。これは大失敗でした。

宣伝をするには独立したホームページがあった方が効果的なのは明らかなので、2013年11月に「東京コウモリ探検隊!」のホームページを公開しました。

今年の宮本自身の調査は、まず地元の杉並区からスタートしました。河川だけでなく、河川から離れた場所でも観察をしていたのですが、そういう場所ではアブラコウモリはほとんど目撃できないということがわかってきました。そこでまず河川を優先的に探索することにしました。そして杉並区内の河川の探索が終わりそうになったたころで次はどうするか、と考えました。杉並区の河川はすべて神田川水系です。それならば神田川水系全部を歩いてみよう、と決めました。神田川下流は飯田橋や秋葉原など都心部も流れており、そういう場所の観察ができるのも利点です。
こうして神田川水系をほぼすべて踏破したわけですが、これにはかなり時間がかかるということもよくわかりました。1年で23区内の全河川を踏破するのは1人では絶対に不可能です。アブラコウモリ調査にはやはり多くの方々が参加してくれることが不可欠であるということを再認識できました。

東京都23区のメッシュ数は約700あります。1人が5メッシュ探索するとして、140人の参加が必要ということになります。700メッシュといっても、中央防波堤の突端とか、羽田空港のD滑走路(最も新しい滑走路)とか、東京港のコンテナヤードとか、行くことが難しそうな場所も含まれていますので実質的にはもっと少なくなります。が、いずれにせよ100人規模は必要ということです。
いかにして動員するかはネットを使った生物調査では避けられない課題です。

●反省会その2 「アブラコウモリがいない」ことも記録する

今年の調査で思ったことのひとつは、「アブラコウモリがいない、ということも記録すべきではないか」ということでした。生息分布地図での空白のメッシュが「観察したけどいなかった」のか「観察に行ってない」のかわからないのは良くないなと思い、今回の生息分布地図では「生息なし」と「未観察」を明確に示しました。「生息なし」といっても、もちろんメッシュ内をすみずみまで探したわけではありません。実際には生息している可能性もあります。今後も調査を続けることによって、生息している・していないをはっきりさせることができるでしょう。
「いない」ということも重要な情報です。来年以降は「いない」もデータベースに記録するようにする予定です。ただ、どんな状況でも「いない」と報告されるとデータ量がふくれあがってしまいますので、日没時刻前後に限定する、2回以上の観察を義務づける、オープンスペースに限定するなどの条件をつけることにします。詳細は来年の計画書に記載します。

●反省会その3 河川は効率がいい

河川を調査するのが効率が良いということがわかったのは今年の収穫です。来年以降は河川を優先観察場所にしようと考えています。もちろん、河川以外ではどのような場所にいるのかを調べることも大切です。

●他に観察できた動物

アブラコウモリを観察していると、他の動物も目に入ることがありました。

まず目についたのがサギ類です。意外と知られていないことかもしれませんがサギ類は基本的に夜行性です。そのため目撃されることが少なく、都会には生息していないと思われがちですが、そんなことはありません。
種類ではアオサギ、ゴイサギが多く、コサギ、ダイサギも見られました。サギ類がいる場所は河床です。魚や水生動物を狙っているのです。
河床にいるだけでなく、飛んでいる姿も見かけました。サギ類は体が大きいですし、飛ぶ姿が独特ですのですぐにわかります。
善福寺川全域、神田川上流はアオサギ、ゴイサギをよく見ました。アオサギにちょうどいいぐらいの水深ですし、河床の段差はゴイサギが待ち伏せするには最適の場所になっています。
他にも飯田橋でゴイサギ、皇居内濠、亀島川でアオサギを目撃しました。また、神田川と隅田川の合流部ではアオサギ、ゴイサギを目撃しました。神田川の最下流部には屋形船が多数係留されているのですが、その船をつなぐロープにサギたちはとまっているのです。隅田川河口付近にサギ類がいるということは、近くに集団ねぐらがあるのではないかと推測できそうです。
善福寺公園の池の島はコサギの集団ねぐらになっていました。

カルガモも善福寺川全域、神田川上流でよく見ました。たいてい集団でいることから、順調に繁殖もしているようです。

観察の途中では何ヶ所かでヒグラシの鳴き声を聞く事ができました。23区内にヒグラシがいることに驚く方がいるかもしれませんが、確かにいるのです。ただし、当然ながらどこにでもいるわけではありません。ヒグラシの分布地図も作ってみたいものですね。

さて、私としてはタヌキやハクビシンなどにも遭遇できるのではないかと期待していました。日没時はタヌキたちが活動を開始する時刻です。善福寺川や神田川沿いはタヌキの目撃が多い地域です。遭遇確率は高いはず…。ですが結局1度も目撃することはありませんでした。タヌキ・ハクビシン観察の難しさをあらためて実感することになりました。

●バットディテクターの使用

バットディテクターとは、コウモリが発する超音波(高周波数の音)を人間が聞こえる音に変換する装置です。値段は数万円というところです。
アブラコウモリは肉眼で簡単に確認できますので、バットディテクターは観察に必須の道具ではありません。しかし、暗い場所だったり、コウモリの姿が見あたらない場所ではバットディテクターがあったら便利だなあ、と思う場面が時々ありました。
来年は試しに使ってみようかと思います。現在、どの製品を買うかを検討中です。

●宮本がやらないこと

このコウモリ調査は今後も継続して行いますが、宮本が行う調査は「東京都23区内のみ」であり「定点観察は行いません」。これはなぜかというと、タヌキ調査の方がやはりメインであるからという理由もありますが、コウモリ調査ではもっと多くの人にいろいろな形で参加してほしいからです。私自身があれもこれもとやりすぎると、他の人は参加しにくいでしょう? 参加できる余地を多く残しておきたいのです。

宮本が定点観察を行えないのは労働者だからです(プロの研究者ではありません)。観察のための時間の確保が難しいのです。また、私自身の優先目標は23区全域での生息調査ですので、特定場所での観察は後回しになってしまいます。
定点観察で調べてみてほしいことは、出現時刻の変化、出現数の変化、最初の観察日、最後の観察日などです。他にも気温や風速とも何か関係があるかもしれません。観察を続けていく内に他にも調べたいことが出てくるでしょう。これは観察者の皆さんが試行錯誤してみてください。

アブラコウモリは観察が非常に簡単なので、目撃情報を集めることはタヌキに比べればずっと楽です。そのため、東京都23区だけでも情報数はいずれ非常に多くなることが見込まれます。そうなると23区外まではとても手が回らなくなってしまうのはわかりきっています。
ですので、東京都23区外の方は自分自身で同じことをやってみてください。マニュアルやノウハウはこの東京コウモリ探検隊!を参考にしてかまいません。
ただ、細かいところは地域の実情に合わせてアレンジしてください。特に難しいのは「動員」です。ネットで参加者を募るのは大都市以外では効率が悪い方法です。友人や知り合いを巻き込む方が手っ取り早いかもしれません。もし小さな自治体ならば自分1人で歩き回るだけでも全域を調査できるでしょう。この辺りは工夫してみてください。

■4.謝辞

1年目で実績も何もない調査に参加していただいた参加者の皆様には大感謝です。本当にありがとうございました。できれば今後も末長くおつきあいお願いします。

■5.追記

2013年11月にサイト「tokyobat.jp」の公開に伴い、「東京コウモリ探検隊!」の名称も正式に使用開始しました。また、これと同時に宮本は「隊長」の肩書きを名乗らせていただくことにしました。今まで「東京タヌキ探検隊!」では宮本は肩書きをまったく使っていませんでした。東京タヌキ探検隊!は宮本1人だけで活動しており、参加者の募集もしていません。1人だけなら肩書きなんて意味はありません。しかし、東京コウモリ探検隊!では多数の参加者といっしょに能動的に観察をしなければなりません。そこで全体のまとめ役として「隊長」を名乗ることにしたわけです。これに合わせて、東京タヌキ探検隊!でも隊長を名乗ることにします(肩書きが無いとマスコミが表現に困ることもよくありましたもので)。

■6.参考文献

ここでは参考文献を紹介したいところだったのですが、…実はあまりよく読んでいないのです。アブラコウモリの生態についての論文や東京コウモリ探検隊!同様に限定された地域でのアブラコウモリの分布を調べた調査の報告書などは少しずつ収集しているのですが、すぐには役に立ちそうになかったのでちゃんと読んでいません。
ただ、アブラコウモリについての本はとても少ないので、これらの論文や報告書について紹介するページを東京コウモリ探検隊!ホームページにいずれ作成したいと考えています。


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