東京コウモリ探検隊!2014年調査報告書

2014ロゴマーク

執筆:宮本 拓海 (東京コウモリ探検隊!)
2014年12月


■1.前文

東京コウモリ探検隊!の2年目の観察の結果を報告する。

東京コウモリ探検隊!は東京都23区でのアブラコウモリの分布を調べることを主な目的にしている。
残念ながら昨年より参加者数は減ったものの、観察地点は昨年よりも大幅に増やすことができた(宮本ががんばりすぎたため)。メッシュ数で換算すると東京都23区の20%でアブラコウモリを確認できた。アブラコウモリは東京都23区では普通に生息していることがわかる。

その他、観察結果からわかったこと、観察時の出来事なども報告する。

※注:文中に「DBN123」のように記されている数字は、データベースで目撃情報に割り振られた通し番号である。この報告書での通し番号は2014年の記録に限ったものである。

※注:気象庁のデータ(気温・風速)は下記ホームページから得ている。 地点は「東京都 東京」で代表し、10分ごとのデータを使用している。
気象庁「過去の気象データ検索」 http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php

※注:本稿に掲載した地図は国土地理院発行の以下の数値地図を複製・使用した。
「数値地図5mメッシュ(標高) 東京都区部」
「数値地図50mメッシュ(標高) 日本II」

※注:途中で紹介している「いきもの通信」は宮本の個人ホームページです。そちらにもコウモリ観察の話題を掲載していますのでぜひお読みください。

●2014年のアブラコウモリ調査参加者(登録順、敬称略)

宮本拓海
篠崎
恬玄齊
石田恭子
草間俊行

■2.調査結果

●調査方法

調査方法の詳細については「東京コウモリ探検隊!2014年調査計画書」をご覧いただきたい。

参加者は個別に観察して、宮本に結果を報告する。観察場所は参加者に任せているが、河川など観察しやすい場所を推奨している。また、できれば複数の地域メッシュでの観察をお願いしている。観察時間は日没時刻前後を推奨しているが、それ以外でもデータベースに記録している。

●調査件数

今年の参加者数は5名。昨年よりも減った。
観察記録の合計は560件。これには定点観察も含まれる。
観察記録が最多の参加者は宮本である(504件)。宮本を除く参加者の平均記録件数は14件である。

定点観察は3ヶ所で計39回行った。定点観察も毎回1件として記録している。
定点観察の詳細は後述する。

●目撃地点の分布

目撃地点をメッシュ地図で表す。メッシュは地域メッシュ(第3次メッシュ)であり、約1km四方に相当する。

上の地図では生息が確認されたメッシュを塗っている。
生息が確認されたのは147メッシュ(21.0%)である(括弧内は全699メッシュに対する割合)。

次の地図では宮本が探索に行ったが目撃できなかったメッシュを「生息なし」としている。もちろん、メッシュ内をすみずみまで探したわけではないし、別の日時にはアブラコウモリが飛来していたかもしれないので、あまり意味がある情報ではない。今後の観察の参考にしていただきたい。
「未観察」は、宮本が探索を行っていないメッシュである。

メッシュ地図からもわかるように、観察に行った場所ではほとんどでアブラコウモリを観察できている。観察できなかったメッシュでもたまたまいなかっただけかもしれず、生息していないとは断言できない。
この結果から、東京都23区ではほぼ全域にアブラコウモリが生息していると推測できる。ただし、生息密度まではわからない。

補足:メッシュ地図について

上記のメッシュ地図のメッシュ数は699である。ただし、東京都23区以外の自治体や海が含まれる「不完全なメッシュ」が227ある。これを0.5メッシュに換算すると、585.5(=699-227/2)メッシュが実質的な面積になる。
なお、「河川敷がわずかに含まれるだけのメッシュ」は除外している。また、「どかまでが海か、河川か」の判断は宮本が行っている。このように微妙な判断が含まれるため、正確なメッシュ数を算出することはできない。

●定点観察

草間(隊員番号005)は石神井川(練馬区)と石神井川から約60m離れた公園(練馬区)で継続して観察を行った。石神井川では8月28日〜9月21日まで14回、公園では9月15日〜11月7日まで21回の観察を行った(アブラコウモリを確認できなかった日を除く)。
石神井川では当初20頭以上の飛翔が見られたが、9月中旬以降は数を減らし、1頭だけしか目撃できなかったこともある。数週間という短い期間で大幅に数が変動することがわかる。変動の理由はユスリカの発生時期が終わったためと推測される。
公園では1頭〜4頭が目撃された。後になるほど頭数が減る傾向だった。

宮本が行った定点観察は後述する。

●目撃個体数

目撃個体数の最大は28頭である(石神井川での定点観察、練馬区、DBN433)。
10頭以上の目撃は5件のみだった。宮本は今年は大量の飛翔にはほとんど遭遇できなかった。

●最も早い観察日

3月29日。練馬区での観察(DBN001)。観察時の気温は19.4℃(気象庁)だった。

アブラコウモリの活動の開始の目安となる「最初に最高気温が20℃以上になった日」は3月18日だった。

●最も遅い観察日

11月7日。練馬区での観察(DBN560)。観察時の気温は実測18℃(宮本の計測ではない)、気象庁18.1℃だった。

アブラコウモリの活動の終了の目安となる「最初に最低気温が10℃未満になった日」は11月14日だった。

●最も早い時刻での観察

日没15分前が最も早い記録だった(DBN001)。
日没前の観察は全体でも16件しかない。

●最も遅い時刻での観察

通常の観察では、日没後185分が最も遅い(浮間公園、北区、DBN309)。アブラコウモリは夜の間中、活動しているのでこの記録には意味はない。
宮本が超音波を朝まで録音した定点観察(詳しくは後述)では、午前4時10分に超音波が記録されている(杉並区、9月14日、DBN539)。

●気温

宮本は「AR816+」というデジタル風速計(温度計兼用)を使用して計測した。この風速計は安価な製品ではあるが、厳密な計測が必要というわけではないのでこれで十分であった。とは言え、精度が不十分であることが予想されたため、実測値の小数第1位を四捨五入してデータベースに記録している。この製品はAmazonで購入できる。
データベースには気象庁発表の東京の10分単位での気温データも記録した。実測値と気象庁のデータが大幅にずれることはほとんどなかった。

アブラコウモリが観測された最低気温は4月12日で、実測16℃、気象庁16.1℃だった(DBN011)。
11月4日は実測16℃(宮本の計測ではない)、気象庁18.5℃だった(DBN556)。
他の日付では17℃未満の記録はない。

5月6日は宮本が神田川(秋葉原以東)で観察をしたが、アブラコウモリは目撃できなかった。この時の実測は15℃〜16℃、気象庁では14℃台だった。

アブラコウモリの活動限界は15℃程度と推測されるが、今年もそれに一致する結果になった。

●風

気温と同じく宮本は「AR816+」を使用して計測した。

実測で最も風が強かったのは2014年5月10日、野川沿いを観察した時で、最大風速7.0m/sを記録した(DBN050)。当然、その中をアブラコウモリは飛行していた。
気象学の定義ではこの程度の風は強風にもならないものだが、感覚的には風に向かって目を開けるのはつらくなるぐらいの強さである。

●雨

アブラコウモリは雨でも活動する。

7月19日は夕方に一時強く雨が降った。宮本はこの日、荒川河川敷を新旧岩渕水門から浮間公園まで歩いたが、最初の時間帯は雨が降っていた。傘が必要なほどの雨の中でもコウモリが飛ぶのを確認できた(DBN289〜293)。

6月9日は夕方から小雨だった。宮本は、みやこ橋(外堀、新宿区、JR飯田橋駅脇、DBN141)で観察をした。橋の上で超音波を聞くことができたのだが、アブラコウモリが上空を飛んでいる様子はなかった。よく観察してみると、橋の下の雨に濡れない空間をコウモリが飛翔していた。みやこ橋は大きな橋ではないが、水面からかなりの高さがある。
同じようなことは他の大きな橋でも起こっているかもしれない。

アブラコウモリの活動が雨によってどう変化するのかは今後の研究課題である。雨だからといって観察を中止しなくてもよいのである。
雨が強くなるほど活動する個体は減少すると予想される。少々の雨なら普通に活動しているかもしれない。

●目撃場所

目撃場所を分類すると、河川337件、公園・グラウンド113件、池(止水)41件、道路上18件、学校(関連施設含む)12件、駐車場8件、運河8件、寺院神社7件、その他16件である。

河川には河川敷など近接する場所も含めている。
池(止水)には皇居内堀、外堀、親水公園(元は川であったが、公園化されて止水になった場所)、釣り堀が含まれる。
寺院神社の内、神社は6件、寺院は1件である。
その他とは、空き地、民家・建物上空などである。

※注:河川コード(国土交通省河川局が定めたもの)があるものは原則として河川としている。ただし、古石場川親水公園のように止水化されたり、暗渠化、埋め立てされたりした箇所は実態に合わせている。

■3.宮本の観察

ここでは宮本の今年の観察について記す。

●バットディテクターの導入

まず今年はバットディテクターを導入することにした。バットディテクターとは、超音波を人間の耳に聞こえる音に変換する装置である。つまりコウモリの超音波を聞くことができるようになる。

購入したのは「YS Design Studio」の製品。

実際に使ってみると、これは非常に役に立った。これまでは暗い場所だとコウモリがいるかどうかの確認が非常に難しかったが、バットディテクターがあればコウモリの存在はすぐにわかる。今年の観察でもコウモリの姿は見えないが超音波を聞くことができた例は少なくない。

※参考:いきもの通信 Vol. 578(2014/5/25) バットディテクターを使ってみたら川は超音波に満ちあふれていた

●観察場所

宮本は今年は49回観察に行き、内47回でアブラコウモリを確認できた(定点観察を除く)。

宮本は昨年は神田川水系を集中的に歩いた。今年はその他の河川や海岸部などいろいろな環境を選んで歩いた。

観察した河川・運河は次の通り(観察順)。「*」は全区間を踏破(開渠区間のみ)した河川。

古川・渋谷川*、仙川、善福寺川、野川、目黒川*、丸子川、谷沢川*、多摩川、皇居外堀、呑川(支流含む)*、立会川*、日本橋川*、内川*、荒川、神田川、隅田川、亀島川*、妙正寺川、北十間川、横十間川、大横川、平久運河(付近の河川、運河の一部を含む)、古石場川親水公園(止水化されている)*、高浜運河(港南、芝浦の運河の一部を含む)

その他の主な観察場所は次の通り(観察順)。

不忍池、上野公園、洗足池、旧芝離宮恩賜庭園(外周)、大井ふ頭中央海浜公園、森ヶ崎水再生センター(外周)、東糀谷防災公園、平和の森公園(大田区)、平和島公園、浮間公園、善福寺公園、木場公園、駒沢オリンピック公園、台場公園、お台場海浜公園、浜離宮恩賜庭園(外周)、葛西臨海公園、日比谷公園、皇居内堀、夢の島公園、夢の島総合運動場、辰巳の森海浜公園、石神井公園、桃井原っぱ公園、戸山公園

このように河川や公園を中心に歩いた。これはアブラコウモリに遭遇する可能性が高い場所を選んだためである。

●アブラコウモリの出勤

日没に近い時刻に、アブラコウモリがある地点を一方向に通過するという事例に何度か遭遇した。

新橋(内川、大田区)では約3分間ほどの間に上流から下流へアブラコウモリ4頭が通過したのを目撃した。日没時刻から11分後である(DBN277)。その後、下流側へ歩いていったが、戻ってくる個体には遭遇しなかった。
アブラコウモリは普通は同じ場所を飛び回っている。一方向に行ったきりというのは、ねぐらからエサ場へ出勤している途中だったのではないかと思われる。逆方向にたどればねぐらを発見できるかもしれないが、それには何日も時間をかけなければならないかもしれない。

同様の例は、
ゴルフ橋(谷沢川、世田谷区、日没時刻ちょうど、DBN109)
東橋(呑川、大田区、日没時刻6分前、DBN186)
品川区東大井6丁目(立会川上流の緑道上空を立会川方向へ移動、日没時刻10分後、DBN222)
でも見られた。

●追いかけっこ

アブラコウモリ2頭が追いかけっこをしているように飛ぶ様子を観察したことがある(DBN142、143、276、350)。
相手を追い払おうとしていたのか、あるいは求愛行動なのかは不明である。

●定点観察の実践

今年の計画書の時点では「宮本は定点観察はしない」と宣言したが、それに反して実行した。 方針転換の理由は、バットディテクターとボイスレコーダーを組み合わせれば長時間の録音が簡単に実行できると気付いたためである。
コウモリを観察するなら一晩中観察したいところだが、何時間もずーーーっと空を見上げているのは時間の無駄でしかない。そのような観察は自動化しなければ効率が悪すぎる。自動化の方法については以前からあれこれ考えてはいたのだが、9月になってようやく今回の方法を思いつき、これを試してみたのである。

定点観察ではバットディテクターとボイスレコーダーを接続して録音を行った。録音したデータはパソコンの音声データ編集アプリケーションで確認した。アブラコウモリの超音波は特徴的なので耳で簡単に判別できる。無音部分は無視できるので効率良くアブラコウモリの有無を確認できる。
この方法の問題点は、アブラコウモリが何頭来ているのかわからないことである。1頭、2頭までなら判別できるが、3頭以上だと判別不能になる。それでもいつやって来て、いつ帰ったかわかるだけでも有用な情報と言える。

この定点観察方法に挑戦してみる方が現れることを期待したい。また、観察方法の改良にも挑戦してほしい。

以下では宮本自身による観察結果を記す。
場所は自宅(杉並区高円寺南)。アパート2階の窓から網戸越しに録音した。
アパートの前は駐車場で、アパート敷地にはカキノキ、サクラなどの樹木がある。以前は夏の日没時刻に駐車場上空をアブラコウモリ1頭が飛ぶ姿を何度も目撃していたが、ここ数年は見ることがなかった。周辺にはまとまった緑地も水場もなく、アブラコウモリの生息にはあまり向いていないと思われる場所である。しかもこの観察方法を思いついたのは9月になってからで、活動のピークは過ぎていた。そのため何も録音されないかもしれないと最初は思っていた。

観察日とアブラコウモリの超音波の録音回数(=アブラコウモリの飛来回数)は次の通り。 録音は日没前に開始し、翌日の日出後に終了している。

9月14日 23回
9月16日(24時で録音終了) 3回
9月23日 1回
9月28日 3回

この日以降はアブラコウモリの超音波は録音されなかった。
(観察日=10月12日、10月14日、10月19日、10月26日、11月2日)

初回にいきなり多数の録音があった。ところが、たった2日後には激減した。このことからも、アブラコウモリの行動は短期間に大きく変わることもあることがわかる。

なお、1回あたりの超音波の録音時間は短く、最長で約34秒しかなかった。録音の位置がそれほど悪いとは思えないので、アブラコウモリは通過しただけだったことが多かったようだ。
録音された超音波の音からは、飛来した頭数はすべて1頭だけだったことがわかる。

※参考:いきもの通信 Vol. 587(2014/10/12) アブラコウモリの超音波を録音してみた。そして長時間録音してみると…

■4.考察:アブラコウモリはどこにいるか

アブラコウモリを発見しやすい場所について、これまでの観察結果から考察する。

●川、池

アブラコウモリに最も高い確率で遭遇できるのは川、池といった淡水域である。荒川、多摩川といった大河川でも、丸子川、谷沢川といったかなり狭くて小さな川でも目撃することができた。
ただし、水量が少ない場所では目撃が少ない(妙正寺川上流部、善福寺川上流部、丸子川下流など)。河口付近の海水が入り込む場所でも目撃は少ない(目黒川、呑川、内川など)。

淡水域にアブラコウモリが飛来する理由は、ユスリカ類を食べるためと推測できる。ユスリカ類は淡水域では普通に発生する昆虫である。海水域で発生するユスリカ類もいるが、種類は非常に少ない。そのため海水がまじる川の河口域ではユスリカ類は非常に少なくなり、アブラコウモリも集まらなくなる。

●樹木

樹木にもアブラコウモリは集まる。樹木の数が多いほどアブラコウモリはよく集まるようだ。
私たちは普段は気付かないが、樹木にはさまざまな昆虫が生息している。例えばガ類、アブラムシ類、甲虫類などが代表的である。これらの昆虫の中には夕方から夜間に飛翔するものも多いらしく、アブラコウモリはそれを狙ってやって来るようだ。

街路樹は密度が低いせいか、枝が刈り込まれているせいか、アブラコウモリはあまり来ない。
芝生などの草地やグラウンドだけではアブラコウモリはあまり来ないようだが、隣接して樹木があれば飛来する可能性は高くなる。
淡水が少ない海岸部や埋め立て地では、アブラコウモリは主に樹木に集まってくると言える。例えば海岸部・埋め立て地では大井ふ頭中央海浜公園、森ヶ崎水再生センター、平和の森公園(大田区)、台場公園、浜離宮恩賜庭園、葛西臨海公園、夢の島公園など多くの場所でアブラコウモリを確認できたが、これらの場所は樹木が十分に多い場所であった。

●照明

「照明」は目撃しにくい場所である。街灯など照明のそばでアブラコウモリを目撃できる可能性は非常に低い。
「街灯→虫が集まる→それを狙ってコウモリも集まる」と連想する方は多いだろうが、そもそも街灯のまわりを虫が飛び回っている光景を最近は見ることがほとんどない。都市には昆虫が少ないからというわけではなく、街灯が昆虫を引き寄せる周波数の光を出さないようになっているためかもしれない。

照明がある場所でアブラコウモリを目撃できたことはあった。
例えば中央大橋(隅田川)は橋の中央にある主塔を投光器でライトアップしているが、その強い光の中を飛ぶアブラコウモリを確認できた(DBN331)。
南高橋(亀島川)では橋の上部構造物の照明が車道を明るく照らしている。アブラコウモリはその照明の下を飛んでいた(DBN332)。
それほど強くない照明でも飛んでいることがあった(時雨橋(平久川、DBN389)、白妙橋(平久運河、DBN390))。

これ以外でも街灯のまわりを飛んでいる例はあるが、樹木や川のすぐ近くであり、照明が誘引しているとは言えない。

以上をまとめると、アブラコウモリがよく飛んでいる場所は「淡水(川、池)」と「樹木が多い場所」と言うことができる。

●アブラコウモリを目撃できなかった場所

目撃しやすい場所の逆の例もまた何かの参考になるだろう。

不思議なことに上の条件に当てはまるはず場所で目撃できなかったことがある。例えば妙正寺公園(杉並区)ではまったく目撃できなかった。善福寺公園(杉並区)ではアブラコウモリの数は(予想よりも)少なかった。観察のタイミングが悪かったのか、本当にいないのか突き止めたいところである。

高輪(港区)一帯を歩いた時もアブラコウモリを確認できなかった。この地域はホテルや寺院が多く、緑地が不足しているような場所ではない。
銀座・築地一帯(主に首都高都心環状線沿い)でもアブラコウモリは確認できなかった。また、日本橋川下流(大手町付近より下流)でも1ヶ所を除き確認できなかった。都心部ではアブラコウモリの生息は非常に少ないのかもしれない。

■5.他の動物の観察

●サギ類

サギ類は合計29ヶ所での目撃があった。
次に目撃地点のメッシュ地図を示す。この地図ではコサギ、ダイサギ、アオサギ、ゴイサギをまとめて扱っている。

青く塗られたメッシュの数が29よりも少ないのは、同じメッシュで複数の目撃記録があるからである。 (善福寺公園と善福寺川上流で半分以上を占めている。)

今年の結果は、思ったほど目撃できなかった、という感じではある。コウモリのついでに観察しているので注意が十分ではなかったかもしれない。サギ類を主目的にすればもっと多く目撃できそうである。

●大手町のアズマヒキガエル

7月にアブラコウモリ観察のために日本橋川沿いを歩いていた時、大手町でアズマヒキガエルに遭遇した。アズマヒキガエルは東京都23区でも普通に見られるカエルだが、さすがにこれにはびっくりした。詳細は下記ページをご覧いただきたい。

※参考:いきもの通信 Vol. 582(2014/7/27) 東京・大手町でど根性ヒキガエルに出会った

■6.今年も反省会

それでは、今年も反省会をやりましょう(笑)。ここからは文体を変えます。

●参加者が少ない

まさか、参加者が昨年よりも減るとは思いませんでした(苦笑)。ニコニコ学会βにも登場したし、新聞にも載ったのに、どうしてうまくいかないんでしょうね?
やはり、どうやって関心を持ってもらうか、関心を持続してもらうかは重要な課題です。

宮本がもっと広報宣伝活動をすればいいのでしょうが、ちょっとそんな時間はとれそうにもありません。

ホームページのアクセス数では東京タヌキ探検隊!の方が東京コウモリ探検隊!よりも2桁多いです。その理由は、コウモリに関心を持っている人が少ない、東京コウモリ探検隊!の知名度が低い、といった理由が考えられます。この2つを改善することが必要となりそうです。

●新聞記事での失敗

8月27日、読売新聞(東京版)で東京コウモリ探検隊!が紹介されました。短い記事でしたが反応は良く、20件ほどのメールが来ました。東京タヌキ探検隊!も何度か新聞に載ったことがありますが、まとめてこれほどのメールが来たのは1回だけしかありません。ところが今回は隊員獲得にはうまく結びつかなかったのでした。

その原因は記事の内容にありました。これは読売新聞を責めるわけではなく、他のメディアの方にも考えてほしいことなので説明させてください。
この記事では連絡先として宮本のメールアドレスを載せましたが、ホームページについてはその存在すらまったく書かれていませんでした。これではうまく行くわけがありません。どこの誰かもわからないような相手にいきなりメールをするような人はそうそういないものです。
もしホームページの存在を書いてくれたら、ネット検索して簡単にたどり着くことができ、どういうことをやっているのか詳しく知ることができたでしょう。そして関心を持ってくれたならばメールを出してくれればよいのです。
メールアドレスよりもホームページを載せてくれた方が心理的な障壁もなく、多くの人に情報が伝わります。メディアの皆様、こういった事情を考慮していただくようお願いします。

(アクセス解析でも記事掲載当日にまったくアクセス数が増えていないことがわかっています。)

もうひとつ。この取材は6月14日に行われました。記事掲載は2ヶ月以上も後、しかも夏休み終了直前…。いろいろと都合があったのでしょうが、生物は季節の影響もありますのですぐに記事にした方がありがたかったです。

※この記事は2014年12月時点でもネットに掲載されています。いずれネット上からは消えてしまうと思われます。

都心のコウモリ探検隊!「隊員」募集(読売新聞)

●定点観察はどう記録する?

今年は定点観察も1日1件として記録しましたが、定点観察の回数が増えるとそれだけ記録件数が増えてしまうことになります。東京コウモリ探検隊!としてはいろんな場所で観察してほしいので方針にはちょっと合わないことになります。どうしたものかと考えているところですが、来年も今年と同じように記録していくことにします。

定点観察は重要な観察方法です。
春から秋まで継続して観察をしていけば季節変動がわかるでしょう。その季節変動も場所によって異なる可能性がありますので、それぞれの定点観察に意味があります。多くの人がいろんな場所で試してみればいろいろなことがわかってくるのではないかと期待できます。
ですが、すべての定点観察を東京コウモリ探検隊!で処理することは難しいです。できれば観察した本人がその報告書を書くようにしていきたいと考えています。

宮本は来年も定点観察をします。春から秋まで通して観察することで新たな発見があるでしょう。

●量的な計測をするにはどうすればいいのか?

今年までの観察結果から、東京都23区ではどこでもアブラコウモリがいるらしいことがわかりました。しかし、アブラコウモリは23区全体に均一に分布しているわけではありません。多い場所、少ない場所が当然あるはずです。
では、それをどうやって計測すればいいのでしょうか? これは難問です。

「ある特定の場所に一晩で何頭のアブラコウモリが来たか」を計測できれば理想的ですが、夜中ずっとコウモリを見張っているわけにもいきませんし、真っ暗だと数を数えることすら困難です。ある程度自動化しないと手間がかかりすぎてしまいます。
そこで私が提案したいのは、超音波を一晩中録音し、超音波が聞こえる総時間を指標にすることです。頭数もわかればなお良いのですが、超音波で3頭以上を聞き分けることは不可能ですからあきらめるしかありません。来年の定点観察でこれが有効かどうかを検証してみたいと思います。

●観察道具

バットディテクターについては上にも書いたように、非常に役に立ちます。これによって観察時間の短縮もできるでしょう。
何回かしかコウモリ観察をしないのならば高価な買い物ですが、本格的に継続して観察をするならばバットディテクターはぜひ持っていてほしい道具です。

興味のある方はバットディテクターの音声を録音してみるといいでしょう。
バットディテクターの音声はボイスレコーダーをつないで録音することができます。最近のボイスレコーダーはバッテリー容量、録音時間などの性能は十分なものがあり、どの製品を選んでも大差はありません。録音した音声データはパソコンで音声編集アプリケーションなどを使えば波形を見ることもできます。
録音するのがアブラコウモリだけではあまり面白くないかもしれませんが、超音波を出すものは他にもいろいろあります。セミ類、キリギリス類、自転車、自動車、ネズミ防除装置などなど。何がどんな超音波を出しているのか、調べてみるのも面白いはずです。

※参考:いきもの通信 Vol. 589(2014/11/23) バットディテクターでコウモリ以外の超音波を探してみた

宮本は今年は温度計・風速計も使用しました。「AR816+」という安物の装置ですが、厳密な精度は必要ではありませんので性能としては十分でした。

また、ナイトビジョン(=暗視装置、やはり安物)も試してみましたが、使えないことが判明しました。性能の問題というよりも、視野角が狭すぎて使い物にならないのです。これは高価なナイトビジョンでも同じはずですので、安易に手を出さない方がいいでしょう。視野角の広い人間の肉眼の方がずっと高性能だと言っていいのです。

※参考:いきもの通信 Vol. 581(2014/7/13) コウモリ観察にナイトビジョンは使えるか?[結論]使えません!

●ちょっとご注意を

宮本へのメールの中には「○○ではいつもコウモリが飛んでいます」というものもありましたが、このようなメールは採用していません。その理由は、日時、頭数が書かれていないからです(場所もあいまいなことがある)。

東京コウモリ探検隊!は真面目な「サイエンス」です。記録は正確に残すことが重要だと考えています。ですので日付、時刻、場所、頭数のデータがそろっていなければ記録しません。
コウモリは「いつでも」飛んでいるわけではありません。数日で数が増減することがあります。一晩中飛びっぱなしでもありません。日時のデータも必要なのです。

また、位置情報(緯度経度)も調べていただくようお願いします。これは宮本の作業の手間を省くためです。ちょっとした作業量でも数百件規模になるとかなりの時間を費やすことになってしまいますので。

●こういうのを誰か作ってほしい

・コウモリ観察メモアプリ

私は観察時にはスマートフォンのメモ・アプリに時刻、位置情報、気温、風速、頭数などを記録しています。位置情報はGoogleマップに切り替えて取得します。
メモ・アプリでも機能は十分ですが、コウモリ観察記録に特化したアプリがほしいです。GPS情報自動取得、写真メモ、データを整形して書き出す、といった機能があるといいですね。

・定点超音波録音装置

超音波を長時間録音するには、上で紹介したようにバットディテクターとボイスレコーダーをつなげば可能です。セッティングは慣れれば大したことはありませんが、できれば1パッケージ化し、スイッチ1つで録音開始できるような装置にしたいものです。そうすればメカが苦手な人でも簡単に扱えるでしょう。
筐体を生活防水にすれば屋外にも設置でき、場所の選択の幅が広がります。

■7.来年の予定

2015年も調査方法は基本的には変更はありません。
計画書は1月中に公開予定ですが、隊員の募集は1月1日午前0時から開始します(メールでのみ受付)。隊員資格は1年限りですので、これまで隊員だった方もあらためて申し込んでください。
申し込みメールにはお名前(ペンネームなど可、「匿名希望」も可)をお書きください。
なお、目撃情報を報告すれば自動的に隊員に登録されますので、あわてて申し込む必要はありません。

今年までの調査結果からは、23区のほぼ全域にアブラコウモリは生息していると言えそうです。ただ、すべてのメッシュを調べたわけではありません。全メッシュで観察をすることが東京コウモリ探検隊!の大目標です。これは隊員の皆様の頑張りにかかっています。

来年もよろしくお願いします。

●宮本の来年の予定

宮本は来年は今年ほどの頻度では探索に行きません。実は本の執筆をしなければならなくなりまして…(コウモリの本ではありません)。ですが、ちゃんとテーマを設定して観察に出かけるつもりでいます。
定点観察(長時間録音)は週1回程度で実行してみようと思います。

■8.謝辞

隊員の皆様、2年目も調査に参加していただいき、ありがとうございました。今後も末長くおつきあいお願いします。

ホームページをお読みの皆様、来年はあなたもぜひ参加してみてください。お待ちしています。


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