執筆:宮本 拓海 (東京コウモリ探検隊!)
2019年7月
東京コウモリ探検隊!の6年目の観察の結果を報告する。
東京コウモリ探検隊!は東京都23区でのアブラコウモリの分布を調べることを主な目的にしている。
あいかわらず参加者数は増えていない。宮本の観察回数も大きな変化はない。
宮本は2018年も未探査地域を中心に歩いてアブラコウモリの生息を調査した。多摩川、荒川、江戸川など河川沿いが主である。自宅での定点観察は行なっていない。
既に報告の通り、2017年10月より新港南橋(港区)で定点観察を開始した。定点観察は2019年4月で終了した。2018年3月までの報告は[参考文献1]で行なっている。最終的な報告も近く公開する予定である。
※注:文中に「DBN123」のように記されている数字は、データベースで目撃情報に割り振られた通し番号である。この報告書での通し番号は2018年の記録に限ったものである。
※注:気象庁のデータ(気温・風速)は下記ホームページから得ている。
地点は「東京都 東京」で代表している。
気象庁「過去の気象データ検索」 http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php
※注:本稿に掲載した地図は国土地理院発行の以下の数値地図を複製・使用した。
「数値地図5mメッシュ(標高) 東京都区部」
「数値地図50mメッシュ(標高) 日本II」
宮本拓海
務台英樹
ウッチー
ぬまちゃん
調査方法の詳細については「東京コウモリ探検隊!2018年調査計画書」をご覧いただきたい。
参加者は個別に観察して、宮本に結果を報告する。観察場所は参加者に任せているが、河川など観察しやすい場所を推奨している。また、できれば複数の地域メッシュでの観察をお願いしている。観察時間は日没時刻前後を推奨している。
今年の参加者数は4名。
観察記録の合計は268件。これには定点観察も含まれる。
観察記録が最多の参加者は宮本である(249件)。次いで務台の17件である。
宮本の定点観察は新港南橋(港区)で行い、73件である。
務台の定点観察(目黒区)は8件である。
定点観察も毎回1件として記録している。目撃頭数が0頭の観察はカウントしていない。
新港南橋の定点観察についてはこの報告書では詳細は省略する。
目撃地点をメッシュ地図で表す。メッシュは地域メッシュ(第3次メッシュ、以下「メッシュ」)であり、約1km四方に相当する。
上の地図では生息が確認されたメッシュを塗っている。青色は今年確認したメッシュ、オレンジ色は昨年以前に確認したメッシュである。「未観察」は探索を行っていない、または探索したがアブラコウモリを確認していないメッシュである。
2018年に生息が確認されたのは80メッシュ(11.4%=全699メッシュに対する割合)である。2013年からの累計では409メッシュ(同58.5%)になる。
上記地図の通り、都心部のほとんどで生息が確認されている。ただし、どこででも均等に生息しているわけではない。
理想としては1年(1シーズン=実質的には約6ヶ月)でほぼ全域の調査ができることだが、現実はまったく不十分である。より多くの参加者がいなければ実現不可能である。
上記のメッシュ地図のメッシュ数は699である。ただし、東京都23区以外の自治体や海が含まれる「不完全なメッシュ」が227ある。これを0.5メッシュに換算すると、585.5(=699-227/2)メッシュが実質的な面積になる。
なお、「河川敷がわずかに含まれるだけのメッシュ」は除外している。また、「どかまでが海か、河川か」の判断は宮本が行っている。このように微妙な判断が含まれるため、正確なメッシュ数を算出することはできない。
目撃個体数の最大は58頭(以上)である(DBN161、8月27日、新港南橋)。40頭以上が11件。
17頭以上(上位35件)の目撃はすべて新港南橋での定点観察(宮本)によるものである。
新港南橋では1月9日(DBN001)。
新港南橋以外では5月5日。北区、板橋区での目撃(DBN26〜45、宮本)。
新港南橋では12月26日(DBN268、宮本)。
新港南橋以外では11月27日。足立区・荒川河川敷での目撃(DBN263、ぬまちゃん)。
アブラコウモリの活動の終了の目安となる「最初に最低気温が10℃未満になった日」は11月15日だった。
日没13分前に観察された例が3件ある。(DBN48=5月15日=新港南橋、DBN81=6月15日=新港南橋、DBN86=7月7日=中野区、いずれも宮本の観察。
DBN263(11月27日、足立区・荒川河川敷、ぬまちゃん)は観察時刻がはっきりしないが、日没30分前程度だったようだ。
日没前の観察は全体で14件あった。内11件が新港南橋での目撃。
日没後208分が最も遅い(DBN260、10月7日、務台)。アブラコウモリは夜の間中、活動しているのでこの記録には意味はない。
宮本は3月までは「GM816」というデジタル風速計(温度計兼用)を使用、4月からはエンペックスTD-8286を使用した。
アブラコウモリが観測された最低気温は10℃。いずれも新港南橋で3回記録している。(DBN005=2月3日、DBN006=2月5日、DBN008=2月9日)。15℃未満での観察は計14件あり、いずれも新港南橋でのものである。これらは12月〜3月の目撃で冬眠期間中の中途覚醒であったと推測される。
新港南橋以外では15.2℃が最低気温(江東区夢の島、DBN247、3月31日、務台)。
宮本の観察(定点観察を除く)は5月〜10月上旬だったため、あまり低温ではない。
気温と同じく宮本は「GM816」を使用して計測した。
実測で最も風が強かったのは6月2日(DBN71、足立区、中川河川敷)、7月20日(DBN96111、港区、新港南橋)の2回で、風速4.0m/sを記録した。
この他にも風速3.0m/s以上は7回記録されている(内4回が新港南橋)。
目撃場所を分類すると、公園・グラウンド34件、道路上14件、河川124件、運河(すべて新港南橋)73件、駐車場0件、池(止水)13件、学校(関連施設含む)2件、寺院神社2件、その他6件である。
河川には河川敷など近接する場所も含めている。
その他とは、水再生センター、スポーツ施設、空き地である。
※注:河川コード(国土交通省河川局が定めたもの)があるものは原則として河川としている。ただし、古石場川親水公園のように止水化されたり、暗渠化、埋め立てされたりした箇所は実態に合わせている。
昨年に続き、未観察のメッシュを埋めることを目的とした。
原則として未観察の地域メッシュを優先して調査した。
本年は水再生センター、多摩川、中川、江戸川を重点的に歩いた。
前もってGoogleマップで緑地や寺社、公園、学校など生息が予想される場所をチェックし、それらの場所を調査するようにした。
調査中の移動はすべて徒歩である。バットディテクターも使用している。
調査結果は上に示した分布地図の通り。
本年は宮本自宅での定点観察は行っていない。
2017年10月に開始した新港南橋(港区)での定点観察は2019年4月まで継続した。
最初の半年間(2018年3月まで)の報告は既に公開している。
東京都心部(港区・新港南橋)で冬も活動するアブラコウモリ群の定点観察(2017-2018年)
2019年4月までの報告書も近く公開する予定である。
サギ類は合計15件の目撃があった。
ただし、すべて新港南橋近辺のものである。多摩川、江戸川など河川敷も歩いたのだがなぜか遭遇できなかった。
新港南橋ではアオサギ、ダイサギ、コサギが目撃されている。初夏から夏の間はほとんど目撃しなかったが、深夜に来ている可能性はある。
今回はメッシュ地図は省略する。
それでは、今年も反省会です。
すいません、やっぱり毎年のことで(苦笑)。どうやったらコウモリ人気を上昇させることができるのでしょう。
スマートフォンのゲーム「ポケモンGO」は今もプレイヤーは多いようですね。
ポケモンを探すよりもコウモリ探しを手伝ってください。ぜひ。
今年もあまりアブラコウモリ探索に行けませんでした。会社仕事が忙しいためでもあります。体力的に無理をせず継続するしかありません。
これを補うためにも、参加者は増やさねばなりません。
参加者を増やすことに尽きます。
私の狙いは自分が主役になることではありません。皆さんが主役になってほしいのです。
皆様のご参加、ご意見、アイディア、実行力を求めています。ご協力よろしくお願いします。
超音波やいろいろな超音波源、超音波騒音については「東京コウモリ探検隊!」ホームページ内に情報をまとめて掲載しています。
http://tokyobat.jp/ultrasonic.htm
超音波と超音波騒音
超音波の調査研究も継続しています。ぜひお読みください。
2019年も調査方法は基本的には変更はありません。
隊員の募集はいつでも受け付けています(メールでのみ受付)。隊員資格は1年限りですので、これまで隊員だった方もあらためて申し込んでください。
申し込みメールにはお名前(ペンネームなど可、「匿名希望」も可)をお書きください。
なお、目撃情報を報告すれば自動的に隊員に登録されますので、あわてて申し込む必要はありません。
東京コウモリ探検隊!の大目標は23区のすべてのメッシュでアブラコウモリを観察することです。私一人ががんばっても限界があります。皆様のご協力が必要です。
来年もよろしくお願いします。
宮本は探索を継続します。主に未観察のメッシュを探索する予定です。
自宅での定点観察も再開します。
新港南橋での定点観察は3月まで継続して行ないます(実際には4月まで行いました)。
隊員の皆様、今年も調査に参加していただいき、ありがとうございました。今後も末長くおつきあいお願いします。
ホームページをお読みの皆様、来年はあなたもぜひ参加してみてください。お待ちしています。