東京コウモリ探検隊! 探索録
2025年07月08日の巻
2025年07月08日(火)
今回は前回の続き。荒川を河口まで歩く。JR平井駅から荒川河川敷を目指す。
荒川の堤防の階段を降りていると脇の草むらをひらひらと2頭の虫が飛んでいる。チョウトンボではないか! まるでチョウのようにひらひらふわふわと飛ぶのでトンボだと気づかれていないかもしれない。しかしこの近くにはチョウトンボが好む水田のような場所はないはず。遠くから飛来したのだろうか。
そこからすぐ目の前が前回も紹介したケヤキの巨木である。平成7年、1995年の植樹との表記があるので樹齢30年を超えているということか。剪定もせずのびのびと成長すればここまで大きくなるのか。ここならまたアブラコウモリが来るはずとにらんで待ち構えていたが、日没後10分を経過しても現れない。意外なことだったがいつまでもここにいるわけにも行かないので出発する。
出発直後、JR総武線鉄橋の下でアブラコウモリの超音波が聞こえた。こんなところにいたのか。姿を確認していると、橋の北の脇から次から次へとアブラコウモリが現れ、川の方へ飛び去っていく。集団というわけではなく、1頭1頭飛来してくる感じ。7分間で21頭以上を目視と超音波で確認できた。
堤防の向こうの住宅地にねぐらがあるということだ。集団ねぐらなのか、あるいは民家などに分散してねぐらがあるのかはわからない。このようなアブラコウモリの通勤ルートがわかるというのは珍しい事例である。日没直後にしか確認できないので調べにくいのだ。これまででも何か所かで「通勤ルート」を発見したことはあるが、こればかりは偶然頼みの発見になってしまう。今回の通勤ルートも私自身で詳しく調べる予定はない。情報は提供するので誰か調べてほしいものである。
今日は満月少し前の月が見えている。13日月ぐらいだろうか。その月に向かって歩いていくような感じになる。気温は前回より高い。昼間は34℃超、観察開始時が30℃で終了時が28℃。アブラコウモリ探索では最も高温の気象条件だ。河川敷の風がやや強いのでまだ楽に感じる。今日はアブラコウモリはまずまずというところか。グラウンドでは確認されないが植物が茂っている場所にはいる。
首都高速の荒川大橋を過ぎると堤防の向こうは大島小松川公園の広場で、アブラコウモリもいそうだが、今回は河川敷を優先しているのでそちらには行かない。
今日は北の方から、つまり左後方から次々と飛行機がやって来る。北を見ると次の飛行機のライトが見え、空には常に2機か3機が目視できる。羽田空港へのルートは今日はこちらということか。こちらから見ると、月の下を飛行機が飛ぶ格好になる。
※後で調べると北東方向から進入してきていたようだ。地上からは北から来ているように見える。
都営新宿線の鉄橋の少し先で河川敷を離れ、丘を登っていく。登ったところにあるのが古城…のように見える建築物である。西洋の城のように見えるが城にしてはサイズが小さ過ぎである。ダンジョンの入口ではない。何かのテーマパークでもない。前回これを見た時はすぐには何だかわからなかったが今は検索すれば瞬速でわかる便利な時代だ。この建築物の名前は「旧小松川閘門」。つまり荒川と旧中川をつなぐ水路を仕切る水門なのである。今見えているのはその頂上部。ということは…本体は地面の下に今も埋まっているのだ。先ほど「丘を登って」と書いたが、この丘は自然地形ではなく盛り土の丘である。なんでわざわざこんなことをしたのかと思うが、現在のミステリアスにも感じるこの景色は他ではなかなか見られない。この古城っぽい建物の前でもアブラコウモリは飛んでいた。ますます雰囲気を盛り上げているとも言えるが、この暗さでアブラコウモリを見ることは難しいので盛り上がらない。
丘を南に下りるとすぐ先に橋がある。旧中川の平成橋。ここでもついでに観察する。アブラコウモリは確認できたが川の上というより岸の公園の高木にアブラコウモリは来ているようだ。
ここからまた荒川河川敷に戻る。少し歩くと地面に「H」マーク。こんなところにヘリポートがあるとは。その先には既に大きな水門が見えている。その名は「荒川ロックゲート」。「lock gate」は日本語で「閘門」という意味。そのまんまのネーミング。ROCKではない。先ほどの旧小松川閘門と同じく荒川と旧中川をつなぐ水路の水門である。こちらが現役。荒川ロックゲートは巨大な建築物だが、旧小松川閘門もだいたい同じ規模のはずである。あの高さまで土を盛り上げたのか、と想像してみる。とんでもない規模の大盛り、特盛りだ。
その先にはテニスコートが続く。ここからは江東区に入る。この辺りになると河川敷の幅も狭くなってくる。ただ、囲いがあるため川の方の様子は見えない。そこを過ぎると対岸はるか前方に葛西臨海公園の観覧車が見えてくる。河口は近い。さらに行くと、アマガエルの鳴き声が聞こえた。後から地図を見ると、草むらに隠れて水場があることがわかる。
荒川ロックゲート手前からアブラコウモリが確認できない。河川敷の狭さのためか。そうこうするうちに今日最後の橋、清砂大橋を通過する。橋から700m以上南下した植物が繁茂している所でようやくアブラコウモリを確認できた。
うっかり事前に調べていなかったのだが、そのずっと手前に荒川河口右岸0km距離標がある。写真を撮ってないのでストリートビューで紹介する。河口じゃない半端な位置が0kmというのは不思議に思えるが、つまりは埋め立て前はここが河口だったのだ。詳しい説明はこちらに(荒川上流河川事務所「荒川の終点、海との合流点」)。
そして荒川河川敷の最南端に到達。まだ先はあるが立入禁止なので進めない。ここには船着き場もある。対岸には観覧車。イルミネーションが次々と変化している。花火→風車→花?といった具合。この辺りではアブラコウモリは確認できなかった。
さて荒川西岸の探索もこれで完了。今日はここまで約9km歩いている。終点は東京メトロ・東西線の南砂町駅なのだが、ここからが遠いのだ…。
まずは清砂大橋まで戻る。戻りは堤防の上を歩く。堤防に登ると目の前に煌々と輝く大プラントがある。これは東京都下水道局の東部スラッジプラント、水再生センターで発生する汚泥を処理する施設である。北上していくと路面に「0R」と書かれている。その時は何だろう、と思っただけで通過したが、後から調べるとこれも荒川河口右岸0kmの表示だった。対岸路面にも「0L」と書かれている。
清砂大橋で堤防を降り、西へ。少し進んで南に折れ、砂町水再生センターの前を通過する。水再生センターは樹木も多いためアブラコウモリがいるのは確実だが道路からは確認できない。この一帯では他の場所でアブラコウモリを確認できたので目的は達成している。
ここからはゴールの南砂町駅へ行くだけとなる。途中、無名の公園の中を通過する。この公園、名前が付いていないのだが隣の施設の所有物だったりするのだろうか。看板も説明も見あたらない謎の公園だ。
南砂町駅は昨年、リニューアルして駅の出入口の位置が変わっている。10年以上前から延々と工事を続けてようやく新しくなったのだが工事はまだ続いている。いつになったら終わることやら。
南砂町駅到着。荒川南端からは3kmも歩いている。全体で12kmオーバー。今回も歩きすぎたか。
日没時刻 19時00分
観察箇所数 21
歩行距離 12.3km
歩行時間 約3時間10分
気温 30℃→28℃
筆了2025年07月22日