東京コウモリ探検隊! 探索録

2025年07月24日の巻

2025年07月24日(木)

アブラコウモリ探索では東京都23区内のほぼ全域を歩いているが、立ち入ることができない場所というのも存在する。その最たる地が羽田空港である。滑走路を歩き回ることなど許可されるはずもない。アブラコウモリ探索では歩いて探すことが大切である。歩き回れない羽田空港には探索に行ったこともなかったし、行くつもりもなかった。そのため羽田空港はアブラコウモリの生息が不明な広大な領域として残っている。

昨年、羽田空港の手前の海老取川を探索したのだが、その後になって「羽田空港に歩いて行くことはできるのか?」とひらめいた。第1第2ターミナルまで歩いていくことができれば部分的だがアブラコウモリ探索ができることになる。ネット検索してみると、徒歩で行き来したというページを見つけることができた。環八通りを歩いていけば第1第2ターミナルへ行くことが可能らしい。それほど難しいルートでもなさそうだ。
だが昨年は忙しくなりすぎてついに行けなかった。満を持して今年は羽田空港徒歩大脱出作戦を実行する。

今回は羽田空港から外へ向かうルートをとるためまず京急で空港に向かう。羽田空港第1・第2ターミナル駅で下車、地下を通って第2ターミナルの展望デッキへ向かう。展望デッキ到着時は日没から10分ほど経過していた。展望デッキの北端から南端まで歩いたがアブラコウモリはいない。そもそも地上5Fは高すぎるし、昆虫が飛び回っている環境でもない。
1Fに下りて正面に出ると、バス乗り場で混雑している。道に沿って北へ向かうがアブラコウモリは確認できないため引き返す。横断歩道を渡って第1ターミナルへ向かう。なにやら工事中で歩道が狭い。

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写真は羽田スカイアーチ。
第1ターミナルに入る前に北の方へ歩いてみる。少し高木はあるがアブラコウモリはいない。戻って第1ターミナルに入り、展望デッキへ。ここでもデッキを北から南へ歩いたがアブラコウモリはおらず。さらに上にガリバーズデッキがあるので登ってみる。

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写真はそこからの眺めで、右が管制塔で、左が東京国際空港庁舎。空港に行って飛行機の写真を撮らないのである。この後も飛行機の写真は出てこない。

1Fに下りて外に出る。いよいよ徒歩脱出開始である。時刻は20時14分。

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第1ターミナル前の歩道を南へ歩いていくとさらに南へ細い道がのびている。その道を進むとトンネルになる。トンネルの上は滑走路である。

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トンネルを抜けたところに階段がありそれを上る。そこからすぐ西には建物が立ち並んでいる。第1ターミナルからここまで来る途中、何人もの人とすれ違った。私の同類などではなく、ここで勤務している人たちだというのはすぐにわかった。その人たちはこの建物群に勤めているのだろう。通勤には電車、バスを使うだろうから第1ターミナル方面へ歩いて行くのも当然だ。ということはつまり、ここから先はすれ違う人はほとんどいなくなるだろうと予想できる。

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陸橋の脇の歩道を進むと環八通りに出る。そしてすぐにトンネルになる。ここも上は滑走路。トンネル内はカーブしているため反対側の出口は見えない。すれ違ったのはスポーツバイクという種類の自転車1台のみ。徒歩の人がいたので向こうもびっくりしただろう。

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写真はトンネルの出口が見えてきたところ。トンネルは9分で抜けた。20時43分。第1ターミナルから30分経過。だがここからが長いのだ。トンネルを出た少し先で脇をモノレールが追い抜いていった。モノレールも地下を通ってここから地上に出ているのだ。歩き進むと第3ターミナルがあるのだが、環八まで出てくる人は皆無のようだ。ヴィラフォンテーヌグランド羽田空港というホテルの前でiPhoneにメモするために立ち止まっているとウオーキングの女性に追い抜かれた。??追い抜かれた??いったいどこからつけられていたのだろう?こちらが歩いても差が詰まらないので時速4km以上は確実に出ている。しばらくするとその女性は走り始めたのでウオーキングではなくランニングだったかとわかる。それなら追い抜かれても不思議ではない。多摩川スカイブリッジ脇を通過。その先の交差点で左に折れ、多摩川沿いを歩く。トンネルを出てからこの交差点までにすれ違ったのは自転車1台、歩行者2人、追い抜かれたのは自転車2台、ランナー1人だけだった。かなり少ないようにも思えるが、夜の住宅地も似たようなものではある。道路の反対側の多摩川堤防の方は自転車も人ももう少し多いようだった。
そして21時22分、ようやく目標の海老取川・弁天橋に到達する。第1ターミナルからは68分かかった。距離は約5km。時速4km超で歩いてきた計算になる。ちょうど屋形船が橋の下を南へ通り抜けていく。時刻からすると多摩川河口の船着き場に戻るところなのだろう。

ところでここまでアブラコウモリについて何も書いてこなかったが実際にアブラコウモリは確認できなかったのだった。やはり羽田空港にアブラコウモリはいないのか。今日は空港内の一部を歩いただけなので、完全にいないとは断言できない。だがいたとしても数は少ないだろう。アブラコウモリが来そうな場所は今日のルート上でもいくつかあったのでそういう場所で一晩中待っていれば観察できるかもしれない。羽田空港のアブラコウモリ生息は未解決である。何かの機会があればもっと詳しく調べてみたいものだ。

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弁天橋から脇を見るとぽつんと鳥居が立っている。鳥居の手前にも奥にも神社らしい建物は見当たらない。「ポツーン鳥居」と名付けたいぐらいの孤立感である。写真の右に見えているのが先程の屋形船。

鳥居はもともとは現在の羽田空港敷地内に位置していた穴守稲荷神社の「一の鳥居」だった。戦後すぐに羽田空港一帯が進駐軍に接収された後もなぜかそのまま残った。羽田空港の駐車場に鳥居が立っている写真や映像が今も残っている。その後、羽田空港の拡張などに伴いついにその場所を去ることになり、1999年に現在の場所に移設された。なお、接収後は穴守稲荷神社の所有物ではなくなっており、独立した鳥居である。額にも「平和」とあるのみである。
以上の経緯などはWikipedia「東京国際空港」「穴守稲荷神社」に羽田の歴史も含めて妙に詳しい説明があるのでそちらもご覧いただきたい。

空港内の探索は終わったがアブラコウモリの探索はまだ終わっていない。少しでも遭遇できる確率を上げるため海老取川沿い遊歩道を北に歩いていく。天空橋の脇でついにアブラコウモリを観察。このメッシュでは去年来た時に確認できなかったのでちょうど良かった。
ここから西へ一直線に進むと穴守稲荷神社、さきほどのポツーン鳥居の本来の神社である。拝殿脇の小さな神社に行こうとした時、突然ニホンアマガエルの鳴き声が響き渡った。なぜ?ここに? だがまず参拝が先だ。ずらりと並んだ赤鳥居を進んでいくと稲荷山なるものがそびえていた。山とは言うが当たり前だが人工の山である。富士塚のようなものか? 後で調べると伏見稲荷大社の稲荷山を模したものとのこと。山というよりちょっとしたタワーのような感じである。

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山頂から見下ろした写真。右の屋根が拝殿。
さて次はニホンアマガエルである。時々鳴き出す時に方角を確認しながら進んでいくと、拝殿の前の小さな田んぼにたどりついた。姿は見えないが確かにここだ。自然分布とは思えないのでどこかから連れてこられたのだろうか。
参拝は終えたので今日の最終ゴールの駅へ向かう。西の鳥居のところでアブラコウモリを確認。穴守稲荷駅の前にも鳥居が立っている。額の向きからすると駅の改札から出てきた参拝客を出迎える鳥居だ。駅から参道が始まっているということか。この線路は空港からできる前から存在している。元は穴守稲荷神社の参拝のための鉄道だったのだ。その来歴を今も示しているようではないか。

日没時刻 18時52分
観察箇所数 2
歩行距離 8.37km 第1・第2ターミナル内は含まず
歩行時間 約3時間00分
気温 29℃→29℃

筆了2025年8月8日(金)

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